説明
「体配 style」
体配は鎬造り庵棟、身幅重尋常、鳥居反り中鋒。茎は生で化粧鑢がかかり、茎尻は栗尻。
「地鉄 jigane」
小板目に杢目が交じりった鍛肌が良く詰み、地沸厚く付く。
「刃紋 hamon」
互の目乱れ、匂い深く小沸が厚くついて刃中は明るく冴え、足、金線、湯走り、砂流しなどが盛んに働く。鋩子は乱れ込み入り小丸に返る。
「特徴 detailed」
大坂新刀を代表する津田近江守助直は、寛永十六年に江州野州郡高木村に生まれ、名は孫太郎と云います。大阪に出て二代助廣に入門。後にその助廣に妹婿となり、延宝三年より津田性冠し、同名を切り添えるようになります。銘は、近江国助直、近江守助直、近江守高木住助直、津田近江守助直、津田近江守助直 江州高木などと切ります。作風は師、助廣の創始した濤乱刃を得意とします。他に互の目乱れや湾れや、直刃も焼きますが、そのいずれもが上手で一般的に匂が深く小沸がよくつき、匂口が明るく冴えるもので、中には師の助廣に迫る作もあります。作刀にみる年紀は、寛文八年が最も古く、元禄六年、五十五歳時の作が最終となります。
本作、貞享元年二月日の裏年期が入った作品で、銘の字体は丸津田、互の目乱れを焼いた素晴らしい脇差です。差裏の物打辺の刃中に疲れによる小さな綻びが有りますが、腕の良い研師なら修正できると思います。
拵は凄くお金のかかった物で、江戸時代後期の作だと思います。迫力の有る鍔、縁頭、目貫は素晴らしい作品です。
現在は保存刀剣が付いていますが、平成の初め当時は、本物かどうかを見極めるため、保存審査のみ依頼する人が多かった時代です。
今ならば、特別保存刀剣には一発合格するでしょう。
「拵 koshirae」
鎺(habaki) :素銅地金着一重の腰祐乗。
鍔(tsuba) :鉄地角形厚みの有る鍔。表の図柄は、雨の日に傘を差し提灯を持った人物。裏の図柄は雨に柊の図。
縁頭(fhchikashira):素銅磨き地に赤銅鯉の図。
目貫(menuki) :赤銅獅子の図。表裏で色揚を替えて明暗を現す。
柄(tsuka) :鮫革は親粒が付き巻鮫。柄巻は正絹金茶色の諸撮み巻。
鞘(saya) :黒呂、差表の鐺手前に銀無垢の獅子が付く。
「刀身の状態 condition of blade」
研:良好です。
傷: 欠点に成るような傷は有りません。