説明
「体配」
鎬造り庵棟、身幅重とも尋常、鳥居反り短鋒。茎は生で筋違い鑢がかかり茎尻は栗尻。
「彫物」
片チリの棒樋が鎺元に丸留と成る。
「地鉄」
小板目肌が良く練れて地沸付き、淡い映りが見れる。
「刃紋」
互の目丁子、足良く入る。刃緑は砂流かかり、刃中は葉が入り銀筋が走る。帽子は乱れ込み小丸に返る。
「特徴」
平安城石堂右近正俊、生国は紀州、師は大和守安定と同じ、紀州藩工である富田三郎兵衛安廣で、子弟のみならず親子だったと言う説もあります。その場合は
大和守安定、安重の兄と成ります。なお紀州での作刀時は「紀州住正俊」と銘を切ります。
正保元年(1644)、師の安廣は紀州藩工を解雇と成り江戸に下りますが、正俊はそれよりも早く江戸に下り作刀しており、「江戸住正俊」、「武州住正俊」の
銘を切った作品も残しています。その後、京に上り作刀を始め、京石堂の祖と成り「平安城住正俊」「平安城石堂右近正俊」等と銘を切る。
また師である安廣も、その後正俊を頼って江戸から京に上り、京にて作刀を始め「平安城安廣」等の銘を切る作品
を残しています。
本作は、銘ぶりから見て、江戸から京に上った時期に作られた物と思われます。長さは2尺3寸以上あり、樋が入っており重量軽くバランスも抜群で、居合に最適ですが
是非とも保存審査に出してみたい一振りです。
鎺 :素銅地銀着一重の腰祐乗。
鍔 :鉄地菊透かし鍔。
縁頭 :銀無垢波の図。
目貫 :金地龍の図。
コジリ:赤銅磨き地碇形コジリ。
柄 :鮫は巻き鮫、柄巻きは正絹黒色の諸捻り巻き(新品)。
鞘 :鯉口には赤銅の金具が付く、部分千段刻みの箇所は黒色で、残りの箇所は暗朱石目塗。
「刀剣の状態」
研:古研ぎですが地刃は良く見えます、釯子に気に成らない程度の小さな薄錆があります。部分研ぎで取れます。
傷: 欠点に成るような傷は有りません。